ブラックボックス
2018.09.30 Sunday
無性にささっと読めるものではない、後味が悪い小説が読みたくなり。
先週末にネットで表題の小説を見つけ、書店を3軒まわってようやく見つけました。
篠田節子『ブラックボックス』
真夜中のサラダ工場、最先端のハイテク農場、地産地消を目指す学校給食……「安全安心」を謳う「食」の現場でいま何が起きているのか。利益追求と科学技術への過信の果てに表れる闇を、徹底した取材と一流のサスペンスで描くエンターテインメント超大作。文庫本裏表紙より
590頁超の分厚さで、見つけた時にうわっと思いましたが休日だったことと、先の展開が気になり1日で読み終えてしまいました。
後味の悪さを期待しての読書でしたが、色々考えさせられることはあっても後味はさほど悪くなかったです。
この小説ではオーガニックを売りにするカット野菜サラダを製造する工場が舞台ですが、想像以上に過酷な労働環境に驚きました。
綿密な取材を行った上で書かれているので、恐らく実態にほぼ近いのだと思うのですが、チェーン店などに流通している食材も普通の会社勤め人からすれば信じられないような環境で働かされている人たちによって支えられていることに愕然としました。
小説の肝は、あらすじにもあるように食の安全です。それももちろん怖さを感じたのですが、工場で働くフィリピーナをはじめとする外国人労働者の方が印象に残りました。エリートコースから転落し、身分を隠して働かざるを得ない主人公・栄美からすれば、信じられないような低賃金で働く彼女達がコツコツ貯めたお金がフィリピンでは家を建てることが出来るという事実。
研修生としてやって来る彼女たちの研修の中身を知った栄美が漏らした「それのどこが研修なの?」という問いに「私たちは働きに来ているのよ。日本で学ぶことなんかひとつもないわ」という大学を出てやって来たマリアの答えが突き刺さります。
工場ではセクハラ、パワハラも当たり前のようにあり、栄美の目から見ればセクハラだと怒りを覚えることも、フィリピン人側では以前の職場にいた日本人とは比べものにならないくらい、片岡さんは優しいしニュートリションの環境はいい、と彼女たちに言わせてしまうことに頭を抱えたくなりました。
それでも、物語の後半でそんな自分の思いは所詮豊かな国に暮らす側からの一方的な視点でしかない、ということを思い知らされる描写があり、そこでもまた色々考えさせられます。
一貫して嫌な人間として描かれる片岡ですが、彼にも抱えている闇があり、案外人を見る目は確かなところも明かされ、彼のやり方を肯定も共感も出来ないけれど企業人としては一定の評価を得るだろうな、と納得です。
ここに書かれていることすべてが本当のことではないだろうけれど。近年、子供達に以前では想像も出来なかった食物アレルギーがあちこちで散見している理由の一端を見たようで、それがものすごく怖かったです。
スーパーで売られているカット野菜はとても便利ですが、やっぱり採れたての野菜は多少不格好でも味が全然違います。
いつの頃からか、トマトやキュウリ等本来は夏の食べ物だったものが当たり前のように1年中食べられるようになりました。
「一日に多品目を食べる必要はありません。旬のものを食べることで、一年を通じて自然にバランスが取れていくのです」
栄養士である聖子の台詞のような食生活がごく普通に出来るようになってほしいけれど。この先の未来は恐らくもっと真っ暗になっていくんだろうな、としか思えないのが残念です。
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