アモーレの鐘
2012.12.15 Saturday
以前、OEKの演奏会でグリーグのピアノコンチェルトをやった際に、アモレーの鐘を思い出す、と書いていたところ、CSでやってますよ、という情報を貰ったので(感謝)録画鑑賞しました。
日本映画の埋もれた名作コーナーでの1作品として取り上げられていました。
簡単にあらすじを
信州、美ヶ原。松本龍一(松本秀人)は、遠くアモーレの鐘が鳴り響く高原にたたずみ、初めて愛した年上の女性、厳本陵子(城戸真亜子)のことを思い出していた。初めて出会った日から、龍一は都会的で美しい陵子のとりことなってしまった。龍一は、弁慶と呼ばれる土産物のオルゴールを作っている男(河原崎次郎)に、彼女について目を輝かせて語る。陵子は行方不明になった弟を探しにこの美ヶ原に来たのだ。ここは弟の好きだった所で、ここにいれば再び弟に会えると信じていたのだ。
ある晩、彼が大切にしていた、弁慶の作ったオルゴールを彼女は龍一に見せた。龍一は「弟さんはきっと生きている」としか言えなかった。陵子の中には悲しみが満ちているようだった。
別れ際、陵子は「私を忘れないで」という言葉を残して姿を消してしまった。傷心の龍一をなぐさめたのは、弁慶の温かい言葉と眼差しだった。
一年後、かつて彼女が住んでいた別荘を訪ねた龍一の前に一人の男が現われ、とある事実を告げられた龍一は、自分が大人への階段を一歩登ったことを知る。そんな彼をを包むように、アモーレの鐘が響き渡っていた。
gooやヤフーの映画紹介に書かれていたあらすじが、あまりにもそのまんまだったので(^^ゞ少々アレンジしました。
滅多に見る機会のない作品だからいいと言えばいいけど、そこまで書いちゃったらもう見る必要ない&微妙に違ってるし。
本編開始前にドラマというより、詩的メルヘン、という紹介がわざわざされていたとおり、全編絵画の世界から抜け出してきたような、美ヶ原の自然に溢れた景色が堪能できます。今では随分、観光名所になってしまった美ヶ原の今よりもっと美しかった頃の姿がスクリーンの世界に残っている、それだけでもこの映画が作られた価値はあるのかもしれません。
霧に包まれた姿も、その霧がさーっと晴れていく瞬間を捉えた映像は、画面越しでもうわーっと来るものがありました。
ストーリー自体は、上に書いたまんま。取り立てて感動したり笑ったりもなく、淡々と進んで行くのですが、弁慶が龍一をなぐさめるくだりの台詞が、気障だけれどとてもよかったです。こういう台詞ってこの時代ならではだなーと。それを言うのが河原崎さんだから余計嵌まるのかも。
あと、意外な場面で関根潤三さんが登場していてびっくりでした。
それにしても、この頃の城戸さんて本当に綺麗だったんですね。後年の画家として活躍しだしてからの、明るい姿を見慣れてしまっているので殆ど別人のようです。何とも言えないミステリアスな色気が今見てもいいです。
しかし、私が未だに憶えていた靴を落とすシーン。劇中でも確かに印象的な美しいシーンですが、あれにグリーグのピアノコンチェルトを被せて予告編を作ったスタッフは見事としか言いようがありません。見方によっては最高の予告編詐欺ですよ、あれ(笑)。
秋山和慶指揮の新日フィルによる音楽が美しく、テーマである「アモーレの鐘」のピアノ曲も綺麗です。全然知りませんでしたが、若かりし頃の西村由紀江さん(「ロング・バケーション」で一世を風靡したピアニスト、と言えばわかる人が多いかも)が作曲されたものだそうです。
好みはすごーく分かれそうですが、色んな意味で確かに隠れた名作でした。
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