震度0
2008.06.13 Friday
震度0 (朝日文庫 よ 15-1) (朝日文庫 よ 15-1)
横山 秀夫
先日から読み始め、先週末の旅行で一気に読了。面白いというとちょっと語弊がある気もしますが嵌ってしまい、もう一度再読してしまいました。
未曾有の大震災の朝、N県警の1人の幹部が失踪。事件か蒸発か?N県警最高幹部6人がそれぞれの利害と保身と野心をかけて震災そっちのけでパワーゲーム(権力闘争)を繰り広げる様を描く。
N県警と聞いて真っ先に長野県を思い浮かべてしまったのですが(^^ゞ、舞台は長野ではなくそのお隣の新潟県でした。
県警本部庁舎と県警幹部公舎という非常に限られた舞台を逆に活かし、狭い空間で広げられる腹の探り合い、エゴとエゴのぶつかり合いをそれぞれの視点から追いかけながら、同時に事件も解明していく展開は緊張感とスリルに溢れいてページを繰るのがもどかしいくらいでした。
それぞれかなり極端に性格付けされた幹部6人の言動の滑稽さに呆れながらも、目の前で展開されているかのようなリアルな描写にどんどん引き込まれていきます。
前半、随所に散りばめられた象徴的なシーンの謎が後半、パズルが組み合わさるように解き明かされていくのが痛快で、ストーリーを追うのに夢中でつい見落としていた台詞や言動を再読して発見して、緻密な構成に唸ってしまいました。
多分、もっと若い頃にこの手の小説を読んだならとにかく彼らの無責任さ、保身ぶりに腹が立つばかりだったと思いますが、いい加減会社勤めも長くなってしまうとここまで極端でないにせよ、どこかで見たような風景に妙な親近感と可笑しさがこみあげてきてしまい、心ではサイテーと思ってもどうも憎めません。
「背広姿で汚れもせずにあの現場へ辿り着くことはできない──私はずっと神戸の映像を見続けていたんです」
同じ日に起きた阪神大震災には、業務上携わらざるを得ないただ1人を除き誰1人目もくれず。次々と報告される恐ろしい数字は単なる数字の羅列でしかなく、映像さえも目の前を素通りしていく。それに罪悪を感じることさえなかった彼らが、初めてほんの少し現実を直視させられたと思うこのシーン。とても心に残りました。
登場人物同様、読者も、とりわけ当時遠くでテレビが伝える映像を見ているだけだった読者にも堀川が発した言葉の重みを感じさせずにはいられない場面です。
小説の中では阪神大震災は同じ日に起きた大事件として登場するのみで、実際のストーリーとは無関係なことに批判的な向きもかなりあるようですが、私は逆にその方がよかったと思います。
遠くで大惨事が起きていようとも、目の前の小事にしか関心が向けられない人間の愚かさを見事に描き切る様は痛快であると同時に、己を省みて胸が痛みます。
この小説の主人公は”情報”だ、というのがハードカバーに添えられた作者の言葉ですが、最後まで読み終えて納得です。確かに主要人物6人のうち誰もが主役ではなく、誰の視点からでも読めるようになっています。今回は何となく冬木目線で読んでしまったので、次は別の人の気持ちになって読んでみようかな。
それにしてもこの小説のラストページ後の彼らが猛烈に読みたいです。
タイトルどおり震度0のまま押し通すのか、それとも決定は覆されるのか、だとすればそれは誰が? そんなことを考え出すと止まらなくなります。
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