カシオペアの丘で
2007.08.15 Wednesday
カシオペアの丘で(上)(下)
重松 清
発売以来、新聞の書評や広告を見るたび読みたいけど単行本2冊は高いので文庫本になる3年後かなーと思っていた本をたまたま家族が買ってきたので先に拝借してしまいました(^^ゞ
幼い頃、夜空に浮かぶ星を眺めながら、いつか自分たちの遊園地”カシオペアの丘”を作りたいね、と話したトシ、シュン、ユウ、ミッチョ、幼馴染の4人。
生まれる前からシュンの祖父とトシの両親に絡むとある事件に巻き込まれていたトシとシュンは、それからほどなくして起こった出来事により互いに許しあうこともなく別れ別れになってしまう。
それから長い歳月が流れ、トシとミッチョが管理する”カシオペアの丘”に幸せそうな親子3人が訪れる。1年後に彼らを襲った悲劇がきっかけとなり、互いに疎遠になっていたトシ、ミッチョの元にユウが現れ、そしてトシの元にある一通のメールが届く。
差出人”ボイジャー”とだけ名乗るそれは、自分がガンで余命いくばくもないことを告げるものだった。
限られた時間の中で再び出会った4人は、それぞれ相手を、自分を許すことができるのか。
既に読み終えた多くの方が絶賛の本書。
重松さんの作品はどれも涙を誘うものが多いですが、これも例外なくというより、”最近泣いてない人にお薦め”、というコメントをつけた方がいるくらい泣けます。
作者の意図どおり散々泣きながら、でも素直には泣けない自分がいました。
この作品は”許し”ということがテーマになっており、4人それぞれの間だけでなくシュンと祖父、物語のキーマンでもある川原さんと妻、など複雑に絡み合った様々な関係の許しが描かれます。
その中でも余命いくばくもないシュンが、幼い頃から憎み続けた祖父を、そして自分を許すことが出来るか、というのが最大のポイントなのですが。
40歳目前という人生半ばで突然、末期がんに冒されるという状況にシュンを置いた時点で結末は見えているわけで。
更に追い討ちをかけるように、直接的にはシュンのせいではないにしろ、シュンの祖父の決断により生まれる前に父を失ったトシ、そしてそんなシュンと自分との間の秘密を知ったその日にシュンの目の前で事故に遭い、半身不随となってしまうトシ。
更には過去にシュンと関係を持ち、哀しい別れをしたことを隠したままトシと一緒になったミッチョ。
そのほかにも出てくる人物すべてが、何らかの重い重すぎる過去を背負い、そしてそれがまるで”メビウスの輪”のように少しずつねじれてつながっていく。
何気ない台詞や描写のひとつひとつが切なくて、時には息苦しいくらいの気持ちになりながらも、そこまで(不幸に)しなくても、とその”あざとさ”で感動も半減してしまいました。
死を目前にした人間と向き合って尚、「お前を許さない」と言える人がどれだけいるのでしょうか。
しかも、若さだけで突っ走ることができる20代ならまだしも、人生も半分を過ぎたこの歳になれば、たとえどんなに忌み嫌う相手だったとしても「最期くらいは…」と思うのが人情です。
登場人物すべてが、劇中では唯一冷酷なように描かれているシュンの祖父・千太郎でさえ優しい、優しすぎるくらいの人々だからこそ、病気という小道具に頼らない別の描き方を見たかった、と思います。
随分辛口、偉そうな感想になってしまいましたが。
いい話です。読んでいると満天の星が見たくなります。
たまたま登場人物と全くの同年なので、過去の色んな描写が懐かしく。ボイジャーとか、高校生ぐらいの時に東京佼成ウィンドオケが毎年出していた今年のブラスみたいなアルバムの中にそういう曲があったなー、なんてどーでもいいことまで思い出しました(笑)。
読み手により、感情移入する人物が違ったり、色んな印象を持つ作品だと思います。
長いわりにさらっとあっという間に読めるので、時間をかけずにでもじっくり読みたい人にお薦めです。
最後にとても印象に残った台詞を。
「忘れっぽい人は優しい人」「ゆるしたことって覚えてないでしょ。ゆるさなかったことは、やっぱり忘れないじゃないですか。だから、ひとをゆるすってことは、忘れるってことなんだと思うんですよ」
昔、子供の頃に姉がよく聴いていたチューリップの歌の中にあった
♪忘れることをつくってくれた 神様に感謝をしなければ♪
という歌詞(タイトルはもう憶えてない)をふと思い出しました。
忘れるって時に哀しいことでもあるけれど、忘れられるってしあわせなことでもある、そう思います。
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