忘却の彼方より
2017.08.20 Sunday
昨年引っ越しをしてから1年と半年近くが経ちました。
引っ越しに際し、多くの経験者がそうであるように、我が家も実に色んなものを処分しました。
共有のモノはもちろん、各個人の所有物も容量に合わせて随分と捨て、かなり身軽になりました。
私自身、処分したモノのうち、衣類は意外とこれを機会に、とあっさり取捨選択が出来たのですが、悩んだのは本とCDでした。
本に関しては、到底入り切る量ではなかったため、相当な量を処分した記憶があります。ごく一部、処分したのに数ヶ月経ちどうしても読みたくなり、再び買った本も(^^ゞ
引っ越した当初は、この先本はなるべく増やさない、と決めていたのが。カズレーザーさんの書物との向き合い方にいたく感銘を受け、少しずつまた増えてきました。増えた分、少しだけまた処分したりして書棚も微妙に入れ替わってます。
そんな相当な吟味を重ねて持参した本の中に、なぜこれを持ってきたのだろう? と思う本がいくつかあります。
嫌いだからとかではなく、完全に内容を忘れている為、その良さが今は不明だからなのです。
そのうちの1冊、伊集院静の「ぼくのボールが君に届けば」は今年に入り、病院の待合時間に読み、昔読んだ時より更に味わい深く、改めてとてもいい短編集であるとの思いを強くして以来、繰り返し再読する1冊となっています。
そんな感じに、持参した書物を少しずつ読み返しているのですが。その中でも最後まで何でこれを持って来たんだろう?? と思いつつ読み返すのを億劫がっていたのが東野圭吾の「秘密」です。
東野圭吾作品は、随分前に「容疑者Xの献身」をきっかけに嵌り、かなりの作品を読み漁っていたのですが、何がきっかけだったのか忘れましたが、もういいかなと勝手なことを思い、件の取捨選択時にもあれだけあったのに、文庫本3冊のみに留まりました。
そのうちの1冊「どちらかが彼女を殺した」は未だに大好きで、折に触れ読み返し、もう1冊の「夢はトリノをかけめぐる」はどうしようもなく、くだらないものを無性に読みたくなった時に読む、貴重な本としてこちらも現役です。
なのに、「秘密」は長編であるが故に何故にこれが?? という謎は常にありながら今日まで放置されてきました。
昨夜、明日は休みだーという嬉しさと、1週間と言っても今週は3日しか働いていない疲れから、テレビを見る気力もなく。本でも読もう、でも、めぼしいお気に入りはどれも読み返しすぎたしなぁ、と思ったところに目に止まり。
実に十年ぶりくらいに読み返してみました。
最初の数ページを読み、面白いけれど登場人物もストーリーも全然記憶になく。殆ど初めて読むに近い感覚で最後まで一気読みしてしまいました。
終盤からだんだん苦しくなり、何度かうるっときていたのが、ラストの仕掛けで
久々に涙腺が決壊しました。
読み終えた途端、すっかり忘れていたのに何故、当時の自分がこれは持っていこうと決めたのか理解すると同時にでかした、と思いました。
美談とかいい話だ、という内容では全くなく。寧ろ逆というか、人によっては受け入れられない部分が大きいと思うけれど。是か非かも含めてこれは傑作だと思います。
あまりに面白かったのと、広末涼子のあとがきで(20歳当時の演じた苦労や思いが初々しくて新鮮でした)映画は結末が少し異なる、とあったのに興味が沸き検索してみると……。
意見が分かれるだろうな、とは思いましたが、ここまでとは。立場や考え方によって多種多様な感想になるのが面白く。まだ、時代の流れなのか、直子が悪女だ自分勝手だ、という意見がけっこうあるのに驚きでした。
初めて読んだ時から干支が一回りくらいしているため、今回読んで何とも切ない気持ちを抱きながらも、しばらくして平介が家事一切をやらない昭和の親父そのものだな、とか、それは今ならストーカーです、とか、やっぱりもう1度人生をやり直したかったのかな、等以前は思わなかったであろうことを思い、その辺も楽しかったのですが。直子=悪女は思いつきもしませんでした。
100人いたら、100通りの解釈とよく言いますが、その見本のようなレビューがいっぱいで。
私自身は、あの結末はアリです。というか選択肢はあれがベストだと思います。
すっかりいい年齢になっても、寧ろ平介より直子の方に純愛(これって死語かも)を感じてしまった夢見るおばさんです。
指輪の件は、誰かに話した時点で秘密はもう”秘密”ではなくなります。もしかしたら、絶対に話すなと言いつつ、どこかで時計屋の主人が話してしまうことを期待していたのかもしれません。平介なら、この秘密を死ぬまで共有してくれる、という思いもどこかにあったのでは? それは直子の我儘、エゴと言われてしまえばそれまでだけど。
それで、今読んでこれだけ色々考えてしまう本なら、もしかして……と思い調べてみたら、このブログの初期にしっかり紹介されていました。
なのに見事なまでに全部、忘れ去っていた自分の鳥頭ぶりには笑うしかありません。
ま、そのおかげで途中でこれって結局は……とか思わずに新鮮な気持ちでまた楽しめたのだから却ってよかったかな。
♪忘れることを教えてくれた 神様に感謝しなければ
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