私の中のあなた
2014.06.10 Tuesday
公開時に映画館へ見に行ったのですが、恐らくその時に色んなことを思い過ぎてというより、キャメロン・ディアス演じる母親に腹が立ち過ぎて(苦笑)レビューが書けず。
5年経って、今ならきっと違う見方もするのでは? と思い、昨夜BSでやっていたのを見ました。
大抵この手の泣かせる映画を映画館で見るのは、涙もろい私には相当勇気がいることなのに、わざわざ見に行ったのは、予告で見た11歳の子供が両親を訴える、という点に興味を惹かれたから。
簡単なあらすじを、シネマトゥデイより引用です。
白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)に臓器を提供するドナーとして、遺伝子操作によって生まれた11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)。彼女はこれまで何度も姉の治療のために犠牲を強いられてきたが、母サラ(キャメロン・ディアス)は愛する家族のためなら当然と信じてきた。そんなある日、アナは姉への腎臓提供を拒否し、両親を相手に訴訟を起こす。
5年経ってどう思うだろう? ということしたが、当時はアナ視点で見ていたのが、今回はどうしてもケイト視点から見てしまいました。
白血病については詳しくないので、細かな部分まではわかりませんが、抗がん剤治療や副作用に関する描写がかなりリアル感があり、公開時に見た時よりケイトの仕草や行動に共感ではないけれど、そういうことかーと思う部分がけっこうありました。
サラに関しては、公開時以上に嫌悪感が強くなってしまってました。
以前は親のエゴと思いましたが、今は親というよりはサラという人個人の恐ろしいまでのエゴに憤懣やるかたなく。
そもそもの姉を救うことを目的として、人為的に子供をもう1人作ることの是非はもちろん、その問題をひとまず置いたとしても、私はどうあっても、サラのやり方を許せないし受け入れられないです。
公判で原告側の弁護士は、アナが生まれた時から受けて来た処置を順番に並べていきます。でも、サラはアナではなくケイトが何歳の時、という言い方をしてはその都度アナの年齢に置き換えさせられます。
聞いているだけで、身体のあちこちに痛みと恐怖が走りそうな、姉のためにと施されてきた処置の確認が終了し、「アナの苦痛だけを考えた場合、ひどいことをしてきたと思いませんか?」と問われ、「えぇ……たぶん」としか答えられないサラ。
たぶんて何ですか? 大人だって痛くて苦しいものを子供にしたら、と考えただけで苦しくなります。
「家族がいちばん、そしてケイト。じゃぁ誰がサラの味方を?」という弁護士の問いかけはあまりにも重い響きがありました。
彼女はアナだけでなく、必死で生き永らえさせたいと願っているケイトが抱えている苦しみすらわかろうとしません。
ケイトがアナに対して言った「ママは私を切り刻んで植物状態にして、ふたつの細胞になってしまったとしても生きることを強制するわ」という台詞が胸をつきます。
子供の心が見えなくなってしまっている親とは対照的に、ケイト、ジェシー、アナのきょうだいは互いを尊重し合い、心を通わせているのが救いです。
そして、アナには「誰がアナの味方を?」と公判で言った弁護人、ケイトには母親が主張する手術ではなく、海へ行きたいと言うケイトの願いを叶えようとする医師、それぞれ家族ではなくとも彼らと同じ位置に立ち、救いの手を差し伸べようとする大人がいたことに救われました。
この作品では、子供の死という現実を受け入れられない人の象徴としてサラが極端なくらい、なんて女なのという感じで描かれていますが、サラだけが異質なのではなく、現実にそういう人はきっと少なからずいる気がします。
本人がどんなことがあっても、1分でも長く生きながらえさせてほしい、と願うケースももちろんありますが。親や子、きょうだいがいなくなる、という現実が受け入れられず、本人の意思を置き去りにして延命治療や、効果がなく苦痛でしかない治療を強いるということは、意外と自分がその場面に直面した場合、それと気づかずにやってしまうことがあるのではないかと思います。
映画の中で、サラは言います。ケイトが死んでも何かが劇的に変わったり、名前がついた通りが出来たり、法的な改正が行われたり、というようなことは何も起きませんでした。ただ、彼女がそこからいなくなった、それだけです。
実際に、よほどの人物でない限り、その人がいなくなったからと言って、ニュースになったり何かが変わることはなく。ごく普通の人の死はサラが言うとおり、今までいたはずの人の存在だけが周りの人々の中からなくなる、ということです。
災害や事故などの突発的な死でなく、難病などの治らない病気を抱えて死に少しずつ直面する人の気持ちというのは、この映画の中で見せたケイトのそれに近く。
終末医療というのは、死に行く本人のためももちろんあるけれど、それ以上に家族が、子や親きょうだいがもうじきその輪の中からいなくなる、ということを受け入れるための時間、という役目もあるのではないか? そんなことを思いました。
感動した、家族愛に泣いた、という感想が多く、作り手もきっとそれが狙いだと思うけれど。それだけでなく。身近な人が死ぬ、ということについて、自分が死に直面したとしたらどうありたいか、そんなことを考えるひとつのきっかけとなってくれたらいいな、と思います。
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