さよなら、アドルフ
2014.04.17 Thursday
今日もぽかぽか、というか昨日より更に暖かく過ごしやすくなってきました。
さすがにそろそろストーブや冬仕様のパジャマは出番がなくなる季節になりそうです。
今日も少しだけお散歩。まだまだ少し前のようにガッツリしっかりは歩けませんが、続けることが大事だからと勝手に言い聞かせてます。体調が戻ってくればまたあちこち出歩けるもんね。
暖かいのはとっても嬉しいんだけど、そうなると頭が蒸れてくるという別の新たな悩ましい問題が発生しそうです(^^ゞ
先日も抗がん剤の投与を受けながら、看護婦さんと暑くなったらカツラの中で頭が蒸れてくると吹き出物が出来たりして大変になりそうだからどうしよう? なんて会話を交わしていました。
個人的には今のクリリンな頭(←家族に言われて以来、すっかり気に入ってしまいました 笑)でも全然構わないのですが、それだと周囲の人は困ると思うので難しいところです。
頭って意外と汗をかくんだなぁ、というのをしみじみ実感しています。
さて、先週の火曜日、抗ガン剤投与の前日に行くなら今しかない、ということで久しぶりにシネモンドへ行ってきました。
実際、ホントにこの日に行かなければその後は……だったので見られなくなるところでした。
映画は1本が2時間前後なので、見たいと思ってもそれだけの長時間同じ姿勢でいられるかが不安でしたが、先月のスケート観戦ですっかり自信をつけたのもあり、優雅に平日の朝の映画鑑賞となりました。
今回見たのは「さよなら、アドルフ」というオーストラリア、ドイツ、イギリスの合作映画です。
実は、何故かタイトルを「さよなら、ルドルフ」だと思い込んでいて、帰り道あれこれ考えながら、アドルフだと内容としっくり来るのになぁとバカなことを思っていました(苦笑)。
ちなみに原題は「LORE」ストレートに主人公の名前です。
簡単なストーリーは、宣伝チラシより引用です。
1945年春。敗戦後のドイツで、ナチ親衛隊の高官だった父と母が連合軍に拘束され置き去りにされた14歳の少女・ローレは、幼い妹・弟たちと遠く900キロ離れた祖母の家を目指す。終戦を境に何もかもが変わってしまった国内では、ナチの身うちに対する目は冷たく、相手が子供であっても救いの手を差し伸べてくれる者はいなかった。そんな中、ナチがユダヤ人にしてきた残虐行為を初めて知り、戸惑うローレ。更に、ローレたちを助けてくれるユダヤ人青年・トーマスが旅に加わったことで、ローレがこれまで信じてきた価値観やアイデンティティが揺らぎ始める。
第二次大戦のドイツを取り上げた映画はこれまでにも数多くありますが、ナチ幹部の家族、子供について描いた作品は見たことがなかったので、それに惹かれて見ました。
それまであまり考えたことはなかったですが、ドイツ国内において、同じ戦時下であってもナチ党員、それも幹部クラスの家族というのは、かなりの厚遇を受けていた、ということが冒頭でさりげなく描かれていて、当たり前のことなんだけれど、どこの国においてもそういう部分は同じなんだなと。
ただ、違うのはドイツは戦後、そういう人々を厳しく断罪し特権を取り上げたのに対し日本の場合は、そういう人達がそのまま既得権益を守り、言葉は悪いですが逃げおおせてしまったことが、未だにいつまでもきちんと過去に向き合えない一因になっている気がします。
当初、本当に何の疑いもなく総統が自分達を導いてくれると思っていたローレが、旅を続けるうちに色んなことに気づいてしまい、自分でもどうしていいのかわからず苦しんでいくのに対し、妹や弟達はローレの言葉を信じ、途中旅に加わるトーマスとも分け隔てなく打ち解けていく対比が切ないというか、本当に子供であることの幸せな部分を見た気がしました。
ローレやトーマスのような青年達は、自分達の肉親やドイツがしてきたことを知り、受け止めることは出来なくともそれを現実のこととして受け入れようとする一方で大人たち、年配者はそんなのはでっちあげだ、と本当はどこかで分かっていたはずなのに決して現実を見ようとしないところが悲しいです。
確か「戦場のピアニスト」では、一般市民もユダヤ人達がどんな運命を辿るのか知っているような描写があったのですが、あれはポーランドだからでおひざ元のドイツでは本当に一切何も知らなかったんだろうか? と考えてしまいました。
わかってはいるけれど、それを認めてしまうと自分の存在意義自体がなくなってしまうから、頑なに貴方達の両親は間違っていない、と言うしかなかったのか。
それは何もドイツに限ったことではなく、日本でもアメリカでもロシアでもどこでも、現在の社会でも見られる光景で。人間の愚かさを目の前に突き付けられた気がしたシーンでした。
テーマ自体はとても重いですが、映画の描写自体はそれほど残酷ではなく。一部、目を背けたくなるシーンもありますが、全体的には淡々と先の見えない逃避行でありながら、あまり切迫した緊迫感もなく進んでいきます。
途中、悲劇的な要素もありますが、あの状況下でそれだけで済んだのは逆にどんな奇跡が働いたのか? という気がしなくもないです。
トーマスについても、ずっと相手が子供ばかりでうち1人は赤ん坊だとしても現実にそんなことが起こりうるのか、という思いがあったのですが、落胆というよりは実際そういう風にした人間は当時少なくはなかったんだろうなと。
”アメリカ人はユダヤ人が好きだからね”という台詞には、ものすごく納得でした。
終わりが唐突で、え、これで終わり? と見た瞬間は思いましたが、ヨーロッパの作品はけっこうそういうのが多いのでそんなものかな。
ただ、彼女達がその後どうなるのかはとても気になりました。ローレはもちろん、幼かった妹弟達が真実を知った時、彼らは何を思うんだろう? と。あと、トーマスもどうなったのか。
煽り文句に釣られた割には、少し肩すかしを食らったような気がしないでもないですが。この映画は内容がどうのこうのより、これを見た人が色んなことを考えることが大事なのでは? と思います。
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