華麗なる一族(原作)
2007.03.30 Friday
ドラマ終了と同時に読み始め、先週のフィギュア観戦旅行の前夜翌日が早いのにも関わらずやめられなくなり、結局寝不足覚悟で読破してしまいました(^^ゞ
華麗なる一族〈中〉
山崎 豊子
冒頭に我慢できずに最後は一気読み、と書いたとおり読み始めると先の展開が気になりページを繰る手が止まらなくなります。
大まかに言ってしまうと地方都市銀行頭取一家という、平凡な庶民には想像すら出来ないような財閥一家を舞台にした複雑な人間模様に銀行再編・財界・政界との軋轢を絡めた長編小説です。
が、各登場人物それぞれがとても丁寧に描かれていて、どの人物に焦点を合わせても楽しむことが出来る、とても緻密なストーリーで最後まで飽きさせません。
銀行と大蔵省の関係や、融資を巡る様々なからくりなど銀行界独特の世界の疲れを癒すかのように描かれた鉄鋼マン達の活き活きとした様子が心に残ります。作者本人があとがきで書いているように、綿密な取材を重ねただけあって読み進むうちに知らずと銀行だけでなく、製鉄についてもミニ知識が得られたような気になります。
組織を巡る軋轢や技術と経営の両立の難しさ、等今の時代も変わらぬモノが多々ある中、ベアリングについてのくだりで”ニードルベアリング”が最新技術となっていた部分に、あーそういう時代だったのかと感慨を覚えました。(現在は更なる高速対応としてニードルからボールベアリングが主流)
単なる親子の愛憎劇という一言では言い表せない、それぞれの思いにかなり感情移入して読みふけってしまいました。
『白い巨塔』や『沈まぬ太陽』でもそうであったように、山崎氏の作品ではとにかく敵役の描き方が絶妙ですが、この作品でも万俵大介と高須相子という2人の悪役(だと私は思います)のこれでもか、というくらい人間の嫌な部分を見せ付ける言動にすっかり嵌り、時折激しい憤りを感じるくらいのめりこんでしまいました。
これくらい非情でなければ一筋縄どころか幾重あるのかわからない、おどろおどろしい世界でのし上がっていくことは出来ない、と頭でわかってはいても最後までこの2人を許す気には到底なれず(^^A
特に次々と娘たちの閨閥結婚を目論み、万俵家の人々を意のままに操ろうとする相子には、同性として受け入れがたいものを感じてしまい、あのラストを迎えても尚、一抹の虚しさを感じたのみで同情するとか、そういう気持ちはとうとう持てなかったです。
もっと若い頃に読んだなら、多くの読者同様きっと鉄平のあのひたむきさに惹かれたと思いますが、それなりに会社の中で長年過ごしてしまった今となっては、鉄平よりも寧ろどうしようもない現実を受け入れながらも、ささやかでしょうもない抵抗を続ける銀平の方に惹かれてしまいました。
普段は誰に対しても心を閉ざす銀平が、母に対してだけは人並みの息子らしい気遣いを見せるところに、世の中の息子の母への愛情の深さを見た気がしました。
って色々理屈をつけてますが、ドラマで銀平を演じていたのが山本耕一クンだったというのも大きいのかも(苦笑)。
苦しみは深いけれど、自分の信じるやりたいことをとことんやり抜く鉄平の方が、見方によってはワガママに生き、結末はどうあれ幸せだった気がします。通常ならば決して受け入れられない、彼の選んだ道ですが、この話に限って言えば彼はこうしなければならなかったんだな、と納得しました。
誰1人幸福そうに見えない万俵家にあって、夢というものを持ち、それを信じた鉄平と二子の存在は眩しく、鉄平が自分の生き方にけじめをつけたくだりは流石に胸にこみ上げるものがありました。
当初はいわゆる上流階級を舞台にした小説なので「華麗なる一族」なのかなー、と思っていましたがラストシーンを読み終えた時に、あーこの話はこのタイトルしかないな、と思いました。上手く言えませんが、ラストシーンの宴の後ともちょっと違う、何ともいえないやるせなさが漂うあのシーン、これを書きたいがために作者はあの長い長い話を書いたのかもしれないな、そう思わずにはいられないラストです。
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