流星ワゴン
2006.05.28 Sunday
先日、『ダ・ヴィンチ・コード』を購入した際、これ3冊そのままレジ
に持っていったら何だかいかにも!ってな人だよなぁ、、という妙な見栄
から(^^ゞもう1冊併せて購入しました。
流星ワゴン
重松 清
38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った。
僕らは、友達になれるだろうか?
という帯のキャッチコピーと、シンプルな表紙が目を惹きました。
実は中身を読むまで、主人公は独身で同い年の父親な人との交流を描い
た話なのだと思っていたら・・本当に自分と同い年の実の父親に出会う
話だったのでびっくり! ってそんなバカな勘違いをする人は他にいな
いのかもしれないけど(笑)。
金曜の夜中から読み始め、面白くてやめられなくなって一気に読んで
しまいました。
ストーリーは、38歳の仕事にも家庭にも失敗した永田さんが、色んな
ことに疲れ果て「死んじゃってもいいかなぁ・・・」と思った夜、
5年前に交通事故死した父子が乗るワゴンに拾われ、夜毎人生の岐路と
なった場所に旅します。その中で、同い年の父と出会い、親子として
ではなく、チュウさん言うところの朋輩として付き合ううち、長い間言
えなかった互いの気持ちをぶつけあい、同時に過去に自分が犯した過ち
に気づいていく。最悪の事態を変えようと、連れて行かれた先々で、
こうしようあぁしようと思うのに、どうしても過去と同じ言動を取って
しまう自分に打ちのめされるばかりの永田さん。
果たして人生のやり直しは叶えられるのか?
とても不思議な話だけど、切ないリアリティーに溢れていて、実際には
そんなことはありえっこないと思いながら、どんどん惹き込まれていき
ました。どの登場人物もそれぞれ魅力的なのですが、お父さんとともに
ワゴンに乗り続ける健太くんと、死を前に朋輩となって現れる永田さん
の父”チュウさん”が特にイイです。
いっぱい溢れるくらいの愛情を持っているのに、それを上手く伝える
術を持たないばかりに、大好きな息子とどんどん険悪になっていって
しまうチュウさん。
実際にこういう人が目の前にいたら、間違いなく衝突しそうだけれど、
彼の不器用な率直さがあったかくて悲しくて、些細な言動のひとつひとつ
にすっかりやられてしまいました。
過去と今の象徴として出てくる、さりげなく散りばめられた、今はない
ものや、今はあっても過去にはまだなかったもの。
横浜フリューゲルス、松坂大輔、カズ、武田、ラモスがいたヴェル
ディ、ユニクロのフリースetc.
たった5年前のことなのに、あっけなく入れ替わってしまうことに恐ろ
しいまでの時間の流れを感じてしまいます。
色々心打たれるシーンが満載ですが、その中でもとりわけ
知りたくはなかった過去に自分が犯してしまった過ちを目の前につきつけ
られた上に、何もできないことへの悔しさから、「やめてください、も
う」「知らないほうがましだ」と言う永田さんへ「被害者づらができる
からですか?」とぴしゃりと言う橋本さん。
この部分にいちばんやられてしまいました。
取り返しのつかないことが起こったとき、あのときあぁしていれば・・と
悔やんでも、心のどこかで確かにあったはずのシグナルを見落としていた
ことを認めたくない気持ち。
多分誰にでもあるそんな甘えた感情を、橋本さんが静かにぴしゃりと指摘
した瞬間、永田さんと同じく自分も読みながら絶句してしまいました。
そんな橋本さんにも、もっともっと大きなそれこそ本当に取り返しの
つかない後悔と秘密があり、読み進むうち明らかになっていくのですが、
終盤の橋本さんと健太くんとの劇的なシーンは涙なくして読めません。
そんな健太くんが永田さんと別れるときに、ひとつだけ特別にと永田さん
親子にプレゼントしてくれたもの。
えーーーっこれかい! と思わず言ってしまうようなものなんだけど、
でも、通してみてみるとこれしかない、というもので。
最後の最後までやられっぱなしでした。
最近は同じ小説を何度も読み返す、ということがめっきり少なくなりま
したが、これは是非もう1回じっくり読み返したいと思います。
そしてこの先、疲れたときや心にぽっかり穴が開いたとき、家族と喧嘩
してしまったとき、等など負の気持ちに押しつぶされそうになったら、
これを読んで元気を取り戻そうかな
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Comments
おはようございます。出勤前です。^^流星ワゴン読まれましたかー。やられますよね、ほんと。この「しんじゃおっかな・・」という気持ち、同世代としてすごく共感できますよね。強く死を望んでいるわけではなくて、死ねるならそれも楽でいいか。。みたいな。
そういう微妙なところをほんとよく知っています。重松さんは。私も結局父とわかりあえないまま死別しましたので、流星ワゴンにのって同世代の友人として父に会いにいきたい。そう思いました。;;
うわ。遅刻する!いってきまーす。紫苑様もお仕事頑張ってくださいね。
Comments
こんばんは。うわっ出勤前のお忙しいときにコメント
ありがとうございます!
「流星ワゴン」えぇ思いっきりやられました(^^)。
別に死にたいわけじゃないけれど、死ねるなら楽でいっかという気持ちには、思わずあーそういうのってあるなぁと共感してしまいました。
重松作品はつい最近嵌り始めたばかりですが、どれを読んでもくぅ〜やられたって思います。ホント微妙なところを上手〜くついてきますよね。
私は何故か子供の頃から父と比較的趣味が似ていて、
よく2人で映画や野球などを見に行きましたが、分かり合えているかというとやっぱり??な気がします。
流星ワゴンに乗って同世代の友人として会いにいきたいけれど、親子ってきっと一生わかりあえなくて、わかったり相手のことを許せるようになったときには、もういないものなんだろうなぁと思うととっても切ないですね。
月末は何かとバタバタしますが、yuki様も美味しいお酒でストレス発散しつつお仕事頑張ってくださいね♪
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